空の青さを知る人よ 概要
公開日:2019年10月11日
『空の青さを知る人よ』は、2019年に公開された長井龍雪監督、岡田麿里脚本、田中将賀キャラクターデザインによるオリジナル長編アニメーションです。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)』、『心が叫びたがってるんだ。(ここさけ)』のスタッフが再集結した“秩父三部作”の第三作としても知られています。
上映時間:107分。興行収入6億円。
キャッチコピーは「これは、せつなくてふしぎな、二度目の初恋の物語」
- 原作:超平和バスターズ
- ジャンル:ヒューマンドラマ・青春・音楽・ファンタジー
- 配給:東宝
- アニメ映画公開:2019年
- 監督:長井龍雪
- 制作会社:CloverWorks
あらすじ
埼玉県秩父市。山あいの静かな町で暮らす女子高生「相生あおい」は、ベースギターを手に音楽に夢中な日々を送っている。
しかし彼女の胸の奥には、どこか夢を「本気で追ってはいけない」という遠慮のような想いがあった。
それは、幼い頃から自分を育ててくれた姉「相生あかね」の存在のせいでもあった。
13年前、あかねは恋人だった金室慎之介(しんの)とともに東京に出て夢を追うはずだった。
しかし突然の両親の事故により、慎之介だけが東京へ、あかねは地元に残ってあおいを育てる道を選ぶ。
それ以来、あかねは慎之介とも別れ、ずっと自分を犠牲にして生きてきた。
ある日、町の音楽祭に東京からプロのミュージシャンとして慎之介が仕事で戻ってくる。
久しぶりの再会……
だが、その慎之介はすっかり「夢を諦めた人」の顔をしていた。かつての情熱も、あかねへの想いも封印したような彼の姿に、あおいは強い失望と戸惑いを抱く。
その夜、あおいの前に突然現れたのは、なんと「13年前の“しんの”(若き日の慎之介)」だった。
この“しんの”は、かつて夢にまっすぐだった、あおいが子どもの頃に憧れていたあの姿そのもの。
そして、あおいの中にある音楽への情熱、夢への衝動を再び強く刺激していく。
「夢って何? 大人になるってどういうこと?」
「家族のために我慢するのは正しいの?」
「過去の自分と向き合えるって、どういうこと?」
現在の慎之介、過去のしんの、姉のあかね、自分自身。
あおいはその狭間で揺れながらも、徐々に本当の想いと向き合っていく。
それぞれの想いが交錯し、すれ違っていた時間がゆっくりと重なりはじめる――。
注目ポイント!
過去と現在の“自分”が出会う不思議な構造
この物語の最大の特徴は、過去の慎之介(=しんの)と現在の慎之介が同時に存在するというファンタジー要素。
しんのは理想や情熱にあふれた“若き日の姿”で、あおいや観客に「夢を見ることの痛みと希望」を思い出させてくれる。
大人になるのはどういうことか。夢はどこまで信じていいのか。
という問いが、自然に心に浮かぶようになってる。
姉妹の関係と“すれ違いの優しさ”
あおいとあかねは、口ではぶつかるけど、実はお互いを想ってる。
特にあかねは、妹を育てるためにいろんなものを“あきらめた”大人。
でもその優しさは、時に重く、時に切なくて――。
素直に「ありがとう」と「ごめんね」が言えない関係がもどかしい。家族のために犠牲になった人の心情がリアルに表現されています。
音楽が心をつなぐストーリーテリング
劇中に流れる音楽は、単なるBGMじゃなくて、キャラの想いを代弁する“もう一人の登場人物”みたいな役割。
主題歌・劇中歌を担当したあいみょんの楽曲が、物語と完璧にリンクしていて、泣ける。
音楽が人の心を動かす力を実感できます。ラストの歌が流れるシーンは鳥肌モノ。
「秩父」というリアルな舞台設定
物語の舞台は、実在の町・秩父。風景がすごく丁寧に描かれていて、地方都市で育つことのリアルがしっかり伝わってきます。
なにを隠そう管理人も同じような地方出身者。
「ここから出たい」「でも離れたくない」って気持ちに共感できる。
コンビニ、山、橋、学校……全部「あるある」。
“夢と現実”の交差点で選ぶ、それぞれの未来
夢に破れた人、夢をあきらめた人、まだ夢を追っている人――。
この映画は、いろんな“夢のカタチ”を持った登場人物がいて、「夢とどう向き合うか」がテーマになってる。
現実と折り合いをつける大人の姿が痛いほどリアルです。でも、そこにちゃんと「希望」が描かれているのが救い。
あとがき
『空の青さを知る人よ』を観終わったあと、胸の中に残ったのは「切なさ」と「あたたかさ」が混ざったような、不思議な感情だった。
正直、管理人は夢とか将来とは過去となってしまいましたが、その分、心の奥にある小さな感情をじわじわと掘り起こされる感じがした。
まず印象的だったのは、“夢を追うことの痛み”がすごく丁寧に描かれていたところ。
しんの(過去の慎之介)の真っ直ぐすぎるくらいのエネルギーと、今の慎之介の現実的でくすんだ感じ、そのギャップに心がざわついた。
自分も昔は「やれる気がしてた時期」があったから、あの対比が刺さるんですよ。
そして、あかねの存在。彼女はすごくリアルな“お姉ちゃん”で、「家族のために自分を後回しにする」っていう、めちゃくちゃ尊いけどしんどい選択をしてる。
でも、感情を大声でぶつけたりしない。ただ静かに耐えて、背中で示す。
あおいがそれを少しずつ理解していく流れは、もう……泣くしかなかった。
音楽も良かった。あいみょんの曲が、感情を言葉にできないキャラたちの“心の声”みたいで。
特にクライマックスのあの歌、あれはもう反則レベルで感情持っていかれた。
それぞれの立場のキャラがいて、どの視点から観ても何かしら刺さるところがある。
だから、観るタイミングや年齢によって、きっと見え方が変わる作品だと思う。
何かを追いかけたことがある人。
大切な人のために、自分を犠牲にしたことがある人。
「このままでいいのかな?」ってふと立ち止まったことがある人。
そういう人にこそ、この映画はしみる。
ちゃんと私たちの中の“心の青さ”を思い出させてくれる映画でした。
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