名探偵コナン 漆黒の追跡者(チェイサー)
公開日:2009年4月18日
『名探偵コナン 漆黒の追跡者(チェイサー)』は、2009年に公開された劇場版第13作目。
今回はシリーズでも人気の高い「黒の組織」が絡む緊迫感あふれるストーリーで、コナン映画の中でも特にシリアスでスリリングな展開が繰り広げられます。
上映時間は110分。興行収入は35億円。
キャッチコピーは「逃げ切れねぇ、か…」「江戸川コナン、最も危険な事件」。
- 原作:青山剛昌
- ジャンル:推理/ミステリー・サスペンス・アクション・恋愛/青春・サイコロジカル/ドラマ
- 配給:東宝
- アニメ映画公開:2009年
- 監督:山本泰一郎
- 制作会社:トムス・エンタテインメント
第5作目の『天国へのカウントダウン』以来に、黒の組織が登場した作品であり、多くの注目を集めました。
また、この作品の半年後に毛利小五郎役の神谷明 氏が降板したため、神谷 氏が演じる毛利小五郎が登場する劇場版は本作が最後になっており感慨深い作品となっています。
あらすじ
東京を中心に関東一円で発生した連続殺人事件。
被害者たちの間には一見共通点が見えないが、現場にはすべて“マージャン牌”に関する痕跡が残されていた。
警察は難航する捜査に頭を抱え、毛利小五郎にも協力を依頼する。
一方コナンは独自に調査を進める中で、この連続殺人事件の裏に“黒ずくめの組織”が関与している可能性を掴む。
そして組織の一人である“あの男”アイリッシュが警察内部に潜入していることも発覚。
アイリッシュは、組織のボス・“あの方”の命令で警察組織に接近し、さらにコナン=工藤新一の正体にまで迫ってくる。
黒ずくめの組織とコナンが、劇場版で初めて真正面から激突する緊迫のストーリー。
事件の解決とともに、コナンは自らの正体を守り抜くことができるのか――。
注目ポイント!
劇場版初!黒ずくめの組織が本格登場
今までの劇場版コナンでは、黒ずくめの組織が直接登場することはありませんでしたが、本作ではついに“本編の核心”に触れる存在としてがっつり登場します。
特にオリジナルキャラ「アイリッシュ」は、組織の中でも異質な人物で、ジンやベルモットとも一線を画すキャラクター。
彼は「黒の組織でありながら正義感を持つ」という二面性を持ち、視聴者の心を強く揺さぶります。
黒ずくめとの攻防が映画で見られるというだけで、ファンにとってはたまらない展開です。
コナン=新一の正体がバレる緊迫展開
本作では、コナンが“正体を知られる”という危機に直面します。
アイリッシュは独自の捜査で、コナンが工藤新一であることを確信し、命を狙おうとする。
しかも彼は警察内部に潜入しており、コナンの周囲に常に影のように付きまとっています。
この「バレるか?守れるか?」という極限の心理戦は、これまでの映画では見られなかったタイプのスリル。
一歩間違えば全てが終わる状況で、コナンがどのようにして切り抜けるのか……。最後まで息をのむ展開です。
連続殺人×麻雀牌の暗号ミステリー
今回の事件は、単なる殺人事件ではなく、麻雀牌を使ったメッセージが各事件の現場に残されています。
この麻雀暗号をコナンが読み解いていく過程は、まさに本格ミステリー。
観客も推理を一緒に楽しめる構成になっていて、序盤から中盤にかけては静かに、そしてじわじわと事件の全貌が明らかになります。
ミステリー要素は過去作の中でもかなりしっかり作られており、「謎解きが見たい!」という人にも満足度の高い作品です。
スケールの大きなアクション&チェイスシーン
「追跡者(チェイサー)」のタイトルにふさわしく、車やバイクでのカーチェイスが大迫力!
高速道路での爆走シーンや爆発、格闘アクションなど、アニメ映画とは思えないほどの“映画的迫力”が満載です。
特に終盤の戦闘は、コナン映画の中でも屈指の激しさと緊張感。
コナンが知恵と身体を駆使して戦う姿に「これはただの小学生じゃない…!」と改めて驚かされます。
“敵にも人間ドラマがある”という深み
この作品の最大のポイントは、敵キャラ・アイリッシュの描き方の深さです。
ただの悪ではなく、信念や感情を持ち、組織に対しても疑念を抱いている彼の存在が、単なる勧善懲悪を超えたドラマ性を与えています。
特にラストにかけての展開は涙腺を刺激されるシーンもあり、観終わったあと「これは敵の話でもあったんだ」と感じさせる重みがあります。
アイリッシュの行動は、コナンシリーズにおける「正義とは何か」というテーマにも深く関わっています。
あとがき
劇場版シリーズの中でも緊迫感とシリアスさが際立つ作品で、特に黒の組織との直接対決をテーマにしているところがファンにはたまらない内容でした。
まず、物語全体に漂う重厚感がすごい。
東京を含む複数の県で起きた連続殺人事件という大規模なスケール感と、警察の捜査会議のシーンで描かれる緊張感が物語に引き込まれる要因になっています。
普段はコミカルな部分も多いコナンですが、この作品ではコメディ要素が抑えられていて、黒の組織という存在の恐ろしさを強調する演出が上手い。
アイリッシュというキャラクターも魅力的でした。
組織の一員でありながらもジンやウォッカとは異なる立場と考えを持っていて、コナンの正体に気づきながらも組織の意向とは違う行動をとる姿が印象的。
彼の過去や思惑が少しずつ明かされることで、ただの敵キャラではない深みを感じさせてくれた。
アクションシーンも見どころで、特にヘリコプターでの追撃は劇場版らしい迫力を持っていた。
コナンが駆け抜けるシーンはスピード感があり、画面から伝わる緊張感が凄まじい。
コナンが逃げるというより、命を賭けて戦っている感覚が伝わってくるので、観ている側も手に汗を握る展開だった。
ただ、ジンやウォッカといったお馴染みのメンバーが登場する割には、彼ら自身の掘り下げが少なかったのは少し残念だったかもしれません。
黒の組織に関する謎が深まる一方で、新たな情報が少ないと感じる部分もありました。
それでも、組織の一員であるアイリッシュを通して見せられる「組織の中でも異なる考えを持つ者がいる」という描写は興味深いし、ラストの彼の行動には胸を打たれるものがありました。
総合的に見ると、緊張感やスリル、キャラクターの深みが見事に描かれていて、黒の組織との対決をこれほどストレートに描いた映画はシリーズの中でも異色で面白い。
劇場版コナンの中でも印象に残りやすい作品だと思います。
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