BLAME!(ブラム) 概要
公開日:2017年5月20日
『BLAME!』(ブラム!)は、月刊アフタヌーン(講談社)にて弐瓶勉にが1997年から連載していた作品です。長期連載作品であり、およそ6年ほど掲載していました。
人類が築き上げた超巨大な都市構造体が舞台で、コンピュータ・ネットワークは人類が到達しうる極限までに達した世界。
現実世界と区別がつかなほどの管理された一大ネットワーク社会は『ネットスフィア』と呼ばれ、実社会と同等か、それ以上へと拡大していった。
人類の生存圏はネットワーク・スペースへと次第に置き換わり、新たな理想の世界が構築されたのだった――。
上映時間:105分。 興行収入:不明。
キャッチコピーは「生き延びろ――。」
- 原作:弐瓶勉(講談社「アフタヌーン」連載)
- ジャンル:哲学的SF・ディストピア / ポストアポカリプス・アクション・サスペンス
- 配給:クロックワークス
- アニメ映画公開:2017年
- 監督:瀬下寛之
- 制作会社:ポリゴン・ピクチュアズ
あらすじ
遥かな未来。
人類はかつて、高度なネットワーク文明を築き、巨大な都市構造体を自在に操っていた。
しかし、その制御を担う「ネット端末遺伝子」を持つ者が失われたことで、都市は暴走を始める。
構造体は自己増殖を止めず、無限に拡張し続ける空間へと変貌。
やがて人類は、かつて自らが生み出した都市によって排除される存在となってしまう。
そんな世界で、一人の男が果てしない構造体の中を旅していた。
名は霧亥(キリイ)。
彼はネット端末遺伝子を探し求め、無限に広がる迷宮都市をさまよっていた。
ある時、霧亥は地中深くに暮らす小さな集落と出会う。
過酷な環境と機械の脅威にさらされながらも、生き延びようとする人々。
霧亥は彼らと共に行動を始め、人類が再び都市を制御できる可能性を模索していく。
人類の希望は失われてはいなかった。
だが、それを取り戻すには、過去の技術と意志、そして静かに進化を続ける都市そのものと向き合わなければならない――。
注目ポイント!
圧倒的なスケールの世界観
物語の舞台は、「自己増殖を続ける都市構造体」——“メガストラクチャー”。
この世界では、都市自体が自律的に拡張し続け、もはや人間の意志では制御できないものとなっています。
無限に連なる廃墟のような建造物で、建築物の中に“空”も“地平線”もない。
「上」や「下」の概念すらあやふやな立体迷宮。
この建築的異常空間は、原作漫画から忠実に再現され、アニメではさらに音や空間設計によってリアルに息づいています。
ただ風が吹き抜けるだけの場面でも、「どこまでも孤独で、どこまでも人間に優しくない場所」であることが感じられます。
無口で謎だらけの主人公・霧亥(キリイ)
霧亥は「ネット端末遺伝子を持つ人間を探している」とだけ語る、無口で圧倒的な存在感を持つ男です。
言葉よりも行動で語るキャラで、登場からほぼずっと無表情・無言。しかし、その背中がすべてを物語ります。
どこから来たのか明かされない。でも人類の未来をかけて動いていることは、ひしひしと伝わってくる。
ハードボイルドで孤高な主人公好きには刺さるタイプ
セリフを削ぎ落とした“静寂の演出”
この作品の特徴は、とにかく「語らないことによって語る」スタイル。
ナレーションや説明台詞は極力排され、静かな空気感の中で物語が展開します。
風の音、遠くの機械音、踏みしめる足音やキャラ同士の会話も最小限。
状況説明はなく、視聴者が「理解していく」流れ。結果的に、観る側にとっては没入型の体験になります。
“何が起きているか”を自分で感じ取っていく感覚は、アート作品に近いとも言えます。
雰囲気系のSF、哲学的なSFが好きな人向けです。
3DCGアニメならではのリアルと無機質の融合
ポリゴン・ピクチュアズの3DCGアニメーション技術が、BLAME!の無機質で硬質な世界にマッチしています。
光と影のコントラストが非常に美しく、金属の冷たさ、人工物の無慈悲さがリアルに表現されている
一方で人間の存在は小さく、脆く描かれており、これにより都市と人類の力の差、圧倒的な孤立感が際立ちます。
また、重力子放射線射出装置の発射シーンなどでは、静寂の中に一瞬の破壊力が走り、視覚的・聴覚的な快感があります。
個人的な感想ですが、ヘッドホンで観ると臨場感がさらに倍増します。
滅びゆく人類と“希望”の物語
この映画の根底に流れているテーマは、「絶望的な世界において、いかにして希望を見出すか」。
主人公・霧亥の旅はただの探索ではなく、“人類を再び文明と接続する”という、途方もない希望に向かっています。
小さな村で必死に生きる人々。
技術の断絶と再発見。
自分たちでは制御できない世界に挑む意志。
決して派手な感動はありません。
でも、その静かな“生への執着”や“抗う姿”が、胸にじわりと残る構成になっています
あとがき
『BLAME!』は、静けさの中にある壮大なスケールと、「圧倒的な“孤独感”」が刺さる、超ハードコアなSFアニメでした。
観ていてまず感じたのは、「人間が生きてはいけない場所に、人間がポツンと存在している」という異質さ。
都市そのものが巨大な敵のようで、その中で生きようとする人々の姿が、とにかく切実でリアル。
そして霧亥(キリイ)の無口で無慈悲な佇まいが、その世界にピタリとハマっていて痺れます。
セリフや説明が少ないぶん、“感じ取る”ことが求められる映画なんですが、そこがいい。
音の間、風の音、機械の作動音……ひとつひとつが世界観を形づくっていて、観ているだけで引き込まれる。
正直、派手な展開や感情的なドラマを求める人には向かないと思います。
逆にそこが万人受けせず、視聴者を選んでしまい「隠れた名作」となった要因であったのではないかと感じてします。
だけど、荒廃した未来にほんのわずかな「再生の可能性」を描く静かなSFが好きな人には、確実に刺さるはず。
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