名探偵コナン 銀翼の奇術師(マジシャン)
公開日:2004年4月17日
『名探偵コナン 銀翼の奇術師(マジシャン)』は、人気アニメシリーズ『名探偵コナン』の劇場版第8作目です。
上映時間は107分。興行収入は28億円。
キャッチコピーは「運命だったのさ、俺たちの出逢いはな…」 「これが、運命なのか…」。
- 原作:青山剛昌
- ジャンル:推理/ミステリー・サスペンス・アクション・恋愛/青春・サイコロジカル/ドラマ
- 配給:東宝
- アニメ映画公開:2004年
- 監督:山本泰一郎
- 制作会社:トムス・エンタテインメント
これまでは、こだま兼嗣 氏が監督を歴任していましたが、本作からは山本泰一郎 氏が監督を引き継いでいます。
これ以前にもキッドはTVシリーズや劇場版『世紀末の魔術師』に登場していましたが、『銀翼の奇術師』は、キッドが“最初から最後まで”ストーリーの中心に絡む初の劇場版として人気があります。
原作者・青山剛昌先生もこの映画について「キッドが“本当にかっこよく見える映画”にしたかった」と語っていて、彼の魅力を余すところなく描くために脚本にも口を出したとか。
あらすじ
物語の始まりは、東京のとある舞台劇会場。
大女優・牧樹里(まき じゅり)のもとに、「月がきれいな晩、あなたの指輪を頂きに参上します」と、怪盗キッドからの予告状が届く。
宝石の指輪を狙うキッドに対し、コナンや警視庁は厳重な警戒体制を敷くが――
キッドは大胆不敵にも人前で現れ、華麗なトリックで逃亡に成功する。
その後、牧樹里と劇団のメンバーたちは、北海道での次回公演のため、飛行機で空路を移動することに。
コナン、蘭、小五郎、園子たちも同行するが、機内ではある不審な出来事が立て続けに起こる。
さらには殺人事件まで発生し、乗員乗客全員が一気に疑心暗鬼なパニック状態に……。
そんな中、機体に異常が発生し、操縦不能の緊急事態に陥ってしまう。
燃料は減っていき、操縦士は意識を失い、通信も絶たれる――
飛行機は、まさに空の「密室トラブル」状態とかす。
絶望的な状況の中、コナンは乗客の中に怪盗キッドが紛れている可能性に気づく。
なぜキッドは飛行機に乗り込んだのか? 本当の狙いは何なのか?
そして、空からの“生還”の鍵を握るのは…コナン? 蘭? それとも――?
やがて、過去の因縁や意外な人物の動機が明かされ、
物語は、愛と裏切りと正義が交錯する、緊迫のクライマックスへと向かっていく。
注目ポイント!
怪盗キッド vs コナンの心理戦が熱い!
この映画の中心は、何といってもコナンとキッドの頭脳バトル。
トリックと思考の読み合い、変装の見破り、駆け引きの連続で、観ているこちらもドキドキ。
“どこにいるか分からないキッド”と、推理を重ねて迫るコナンの攻防がスリリング!
“空”という密室でのパニック展開
飛行機という逃げ場のない空間で、トラブル・事件・人間ドラマが同時多発。
しかも、機長が倒れて、操縦できる人がいない!? という状況に……。
コナンたちがどうやってこの非常事態を乗り越えるかが最大の見どころ。
映画全体に張りつめた緊張感が続くのも、今作ならでは。
蘭と新一(コナン)の絆がさりげなく描かれる
事件の中で、蘭は新一(=コナン)に宛てた手紙の存在を気にしていたり、彼の“言葉”を心の支えにしたりと、感情が静かににじむ描写が多数。
派手な恋愛描写ではなくても、“信じて待っている”蘭の気持ちが切なく伝わってくる…。
劇団内の人間模様&過去の因縁
表の顔は華やかな劇団メンバーたちも、実はそれぞれに秘密や確執、過去の出来事を抱えていて、
そこが事件の真相に深く関わってくる。
単なる殺人事件ではなく、「なぜ、今ここで起きたのか?」という動機の部分に注目!
“変装中のキッド”に隠されたヒントの数々
観てる途中で「キッドがどこにいるか」を当てたくなるのがこの映画の楽しさ。
話し方、仕草、表情、ちょっとした演出に、キッドの“らしさ”を匂わせる細か〜い伏線が散りばめられていて、何回観ても「ここか!」ってなる発見がある。
見破れたらちょっとした探偵気分になれる。
あとがき
『銀翼の奇術師』は、コナン映画の中でも“サスペンス×心理戦”が強めの作品。
舞台となるのは「空」という逃げ場のない極限状況――
そこに怪盗キッドという異色のキャラが加わることで、ミステリーのテンションがぐっと上がる。
まず印象に残ったのは、スピード感のある展開。
前半で華麗に登場するキッドのシーンは、“魔術師”の異名にふさわしい演出で、さすがの存在感。
いつもながら大胆でおしゃれな演出で魅せてくれる。
でも今回、キッドはただの“盗み役”では終わらず、中盤からは物語の本筋にどっぷり関わってくる。
その意外性が新鮮で、「キッドってこんなふうにもストーリーに関わるんだ……」と感心させられた。
そして何より、飛行機内での緊迫感がすごい。
殺人事件だけじゃなく、操縦不能・燃料不足・通信不能という三重のトラブルが発生して、まるで別のジャンル(パニック映画)のような息詰まるシーンが続く。
中盤から終盤にかけての流れは、ずっと手に汗握る感じ。
そんな中で、コナンが冷静に推理し、行動し、乗客を守ろうとする姿にはやっぱり胸が熱くなる。
毎回劇場版では「小さな体でここまでできるのか……」と毎回思わされるけど、この映画ではそれが特に際立ってた。
一方で、蘭の存在もとても印象的。
派手に何かをするわけではないけど、彼女の新一への一途な想いが随所に感じられて、観ていてすごく心が温かくなる。
手紙に込められた想いや、無言のやさしさ――そういう静かな感情表現がとても丁寧に描かれていて、
アクションの中にも人間ドラマとしての深みが感じられた。
ラストシーンは、キッドの立ち去り方も含めてとてもスマートで余韻がある。
事件が解決しても、「すべてを明かさない」美学というか、“観る側に想像を委ねる余白”がある終わり方で、何とも心地いい後味だった。
総評として『銀翼の奇術師』は、ただの推理ものじゃない。
心理戦、パニック、恋愛要素、ヒューマンドラマがバランス良く溶け合っていて、コナン映画らしさの中に“ちょっと大人びた魅力”を感じる作品だった。
怪盗キッドの魅力にハマった人にも、蘭の繊細な想いに触れたい人にもオススメの一本です。
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